vol.1 福田春美さん(ブランディングディレクター) -後編-
福田さんの愛用調理道具
グローバルの包丁一式
大きな魚もさっさとさばいてしまう福田さんの愛用包丁は「グローバル」。
刃物で知られる新潟県燕市のメーカーです。「柄も刃もステンレスの一体型で衛生的ですよ」。砥石を使って定期的な手入れも欠かさないとか。右から、ペティナイフ、文化包丁、菜切り包丁、小出刃包丁、カービングナイフ。ボウルやバットは、業務用。
木製のカッティングボード
「まな板として。また、チーズやパン、果物を盛るプレートと本当に便利!」と、朝食やホームパーティーによく使う木製のカッティングボード。一番上から、マンゴーウッドのボードはステンレスの持ち手でつかみやすい。自然な曲線の木目のものは、スペイン・アンダルシア地方のオリーブ製。「3世代続くオリーブ畑の方が1枚1枚作っているんです。オリーブは丈夫な木。長く使うためにも週に1度は熱湯消毒して干しています」。
サービングスプーン
水牛の角から作られたもの、韓国の真鍮スプーン“スッカラ”、メープルの木を彫って作ったNYの「Blackcreek」のものなど大きなサイズのスプーンが好きでいつしかこんなに集まったそう。「鍋をかき混ぜたり、料理を取り分けたり。そして造形が美しく見ているだけでも楽しい」。
始末のいいキッチンのための道具
こし器
食材を無駄にしないようにと、魚のアラに塩と酒をふってたっぷりのお湯で出汁をとることを習慣にしている福田さん。ザルを使っていましたが、最近旅したアメリカのアンティークショップで見つけたのが、この三本足のこし器。こした出汁はジップロックにいれて冷凍を。手にはめているのは、「PUEBCO」のコットンミトン。軍手のようなデザインでくったりした質感がかわいい。パイピングは黒以外に赤色もあり。
チャンパーポット
使い終わったクロス、ふきんは必ずざっと洗ってから熱湯消毒するのが日課。自らディレクターを務める「CorteLargo」のチャンパーポットで、数分煮沸したのち、洗濯機に放り込みます。ちなみにチャンパーポットとは、もともとはおまるのことだとか! 鍋の代わりや鉢カバーにもなります。
私の勝負めし 「パエリア」
福田さんの得意料理はというと、パエリア。
「これには深いわけがあって。実家が魚市場のそばでしょう。市場の方が売れ残った魚を“2番目の姉ちゃんに送ってやってくれよ”と置いていくんですって。すると親が送ってきてくれるんですよ、大量の魚を」
海老やイカ、たらこや筋子……。季節ごとの旬の魚が段ボールで月に1回、多い時で2〜3回も届くとか。
「ひとりで暮らしていると食べ切れませんよね(笑)。でも、捨てたくないからなんとしてでも食べようと。そこでさばいて料理しているうちに、エビの頭とカラで出汁もとってパエリアを作るようになったんです」
魚のアラも入った出汁は絶品で、魚と野菜を組み合わせて季節ごとにいろんな味にできる!というほどの、パエリアマスターに。
「食材を無駄にしたくないんですよね。全部感謝して食べ切りたい。
それができると、なんだか自分の仕事の質もあがるような気がします」。
<作り方メモ>
「秋刀魚は3枚に開き骨を取り、塩をふって10分ほどおきます。その間に、パエリア鍋にオリーブオイルをニンニクで香りづけして、水分をふいた秋刀魚を皮目から焼き、皮に焼き目がついたら取り出します。こうすると皮がはがれないんですよ! 無洗米を入れて2分炒めて、フュメドポワソン(魚のアラで取った出汁)にサフランを浮かべて色付けしておいたスープを流し入れます。お米に対して3倍くらいかな? 少しずつ入れながら、スープをお米に吸わせていきます。大体スープを吸ったら、お米を平らにして焼いた秋刀魚と輪切りにしたミニトマトを並べてアルミホイルをかぶせて、パエリア鍋を回しながら20分、弱火で炊き上げます。回す理由は、パエリア鍋と日本のコンロがなかなか合わず火の通りがなんだかムラがあって。フランス人の友人に聞いたら、回しながら作るといいよって。最後、10秒ほど強火にしてから火をとめて、15分蒸らしてできあがり。レモンを絞って食べると、さっぱりして脂ののった秋刀魚とあいますよ」。
福田さんにとって、キッチンとは?
「自分でデザインしたキッチン道具の使い勝手を試したり、旅先で出会った食材や調味料をいろいろ試したり。朝起きてから、今日の体調や気持ちに耳を澄ましてチューニングするのも、お湯を飲みながらキッチンで。仕事もキッチンのテーブルでしているので、私にとってキッチンは「実験の場」かな」。
写真/永田智恵
取材・文/高橋紡