Vol.6 森 清美さん(服飾作家)
オフィス用の雑居ビルの一室を改装して暮らす森 清美さん。
業務用のステンレスのキッチン、少ない収納を補うための木箱。
とてもシンプルで生活感のないキッチンですが、
ずらっと並ぶ道具類や食材を見れば、森さんが料理上手とわかります。
後半は、収納術と窓辺をいろどる好きなものの、お話。
「箱」が好き
ない収納は箱で補う
左)冷蔵庫の上は、炭酸水、白ワイン、ハードリカー、コーヒー豆などのストック置き場として。ただ並べるのではなく木箱におさめることですっきり見える。
右)ワイン箱にはカトラリー用の引き出しがおさまるようにDIYで工夫を。DIY精神にあふれるキッチン。
左)トマト缶、パスタ、乾物も木箱にいれてステンレス製の棚にストック。冷蔵庫がコンパクトなため、あまり買い置きはせず新鮮な食材を毎日買いに行くとか。
右)調味料類もかごにまとめて。かごのなかに、さらにかごを入れてより使いやすく。
古道具屋などで購入した木箱やかごが活躍。ステンレスの棚と高さを合わせることが、異素材でも違和感なく並ぶコツ。
主宰する自身の洋服ブランドのためのアトリエ、リビング、ダイニング、キッチンを兼ねる空間は、40平米はある広さ。とても気持ちがいい抜け感がありますが、収納がいっさいありません。
ふたり暮らしの森さん。料理は毎日するそうで、調理道具や器、食材のストックはどこに収納しているのでしょうか?
「収納のための家具はないんです。全部、オープン」
鍋やフライパン、せいろなど調理道具はステンレスの棚に。
食器はよく使うものだけ、木箱に。
「ワイン箱やりんごの収穫のための箱など、木箱が好きで。古いものを集めていたのが役に立ちました」
縦にしたり横にしたり。キャスターを付ければ引き出しに、縦に積めば簡易の食器棚に。便利なのに、ラフさがかわいい。木箱のポテンシャルは、たいしたものです。
ダイニングの窓辺は、
小さな植物園
左)白い麻のカーテンからやわらかに光がさす、窓辺のダイニング。大通りに面しており、道路をはさんだ向かいは大型店舗の白い壁があるため、誰とも目が合わず、光が反射して一日中明るい。
右)多肉植物がずらりと並ぶ姿は、植物園さながら。
写真好きなふたり。愛機はコンタックスのT3とライカのM2。。現像は友人に頼んでいるため、老舗「IL FORD」のフォトペーパーは常備。
左)友人からもらった植木鉢や木の枝など、窓辺に並べて。
右)朝食は昼とかねて。お米が大好きで、ごはん、味噌汁、漬物は欠かせない和食党。友人が遊びに来るときは、ワインに合うようなおつまみを。
よく作るのは和食。食材は、近くの駐車場に定期的にたつという地野菜の市場で調達。冷たい野菜が苦手、というパートナーのために、ベーシックなレシピを彼の口に合うようにアレンジ(今回、作ってくれたポテトサラダもきゅうりや玉ねぎを入れるレシピが主流だけれど、入れないレシピに)。
森さんが話す日々の食事についてのあれこれは、まだ30歳をすぎたばかりだというのに地に足がついていて、どこか「母」的な目線。
なにもなかったオフィスを住空間に。木箱のなかに引き出しを組み込むなどDIYで、さらに使いやすく。より口に合うようにレシピをなんどもアレンジ。自身のブランド「ZAN」で、古着をリメイクして新しい表情を持つ洋服にと作り変える想像力あふれる姿勢は、キッチンでも垣間見られました。
私の勝負めし「ポテトサラダ」
<作り方メモ>
「マヨネーズを使わない、さっぱりワインにあう味です。茹でたじゃがいもに、半熟卵、お湯で戻したドライトマト、粒マスタード、塩、ブラックペッパー、オリーブオイルを入れて混ぜ合わせるだけです。最後にパセリを乗せます。調味料は好みの量で。アンチョビをいれてもおいしいです」
森さんにとってキッチンとは?
キッチンと仕事場は同じような場所。
作るものが服か料理かの違いだけで、
仕事と同じぐらい集中できます。
取材・文 高橋 紡
写真 萬田康文